1月29日午後、阪大豊中キャンパスで第一回量子と生命研究会が井元基礎工学研究科教授の主催、北川教授の司会で開催されました。
井元教授は私が総長をしていた時に始めた大阪大学未来研究イニシアティブグループ支援事業に「量子インターフェース」という課題で応募され3年間支援させていただきました。そのグループのお一人の北川教授が、「量子力学で生命の謎を解く」アル=カリーリ、マクファデン共著、水谷訳に対する私の読後感想文を見て、この研究会を開催するきっかけになったそうです。
http://toshio-hirano.sakura.ne.jp/…/1_liang_zi_li_xuede_she…
ということで私も招待されました。量子物理学と生命科学という異分野融合領域であり、聴衆は少なかったですが、若者が多く、真剣な討論会になりました。北川教授は会場に人が少ないのはその分野がこれから急成長する証拠だ。5−10年後にはこの種の研究会が人で溢れるようになるだろうと予想されていました。
DNA2重らせんが発見され、生命科学は飛躍的に進歩しました。そしてゲノムプロジェクトの完成に至り、生命科学は1つの踊り場に到達したと思います。しかし、例えば、免疫に関与する分子がすべてわかっても未だに我々は免疫反応を予測することも制御することもできません。まして生命の部品をすべて揃えても生命を創り出すことは不可能です。命あるものと物体は何が異なるのか?70年以上前の1943年に量子力学の産みの親の一人であるシュレデインガーが問題提起した「生命とは何か」に対して、量子生命科学は21世紀に大きな壁を突破できるための大きな力になってくれるかもしれません。
以下はプログラムです。第2回は今回他用があり出席できなかった分子科学研究所の石崎章仁氏(凝縮相量子ダイナミクスの理論とその光合成初期過程への展開)を招いいて2月8日に開催される予定です。
「量子と生命」研究会(第1回)
日時:2016年1月29日(金) 13:30~18:30
場所:大阪大学基礎工学研究科(豊中キャンパス)国際棟セミナー室
プログラム:
13:30〜13:40 井元信之 基礎工学研究科教授
「はじめに」
13:40〜14:40 前田公憲 埼玉大学大学院理工学研究科 准教授
「渡り鳥の磁気コンパスとスピンの量子力学」
14:40〜15:00 コーヒーブレイク
15:00〜16:00 山口兆 ナノサイエンスデザインセンター 招聘教授
「光合成Mnクラスターのスピン状態とESR」
16:00〜16:20 コーヒーブレイク
16:20〜17:20 岡田康志 理化学研究所生命システム研究所 チームリーダー
「量子脳仮説は荒唐無稽なのか」
17:20〜18:30 フリーディスカッション & 懇親会