グローバル化第5波
 

グローバル化第5波:多様性爆発の世紀

 人類の歴史20万年はグローバル化の観点から大きく5つに分けることができると思う。20万年から数万年前の間に生じたホモ・サピエンスの緩やかな大陸間移動と5大陸への拡散を、グローバル化の第1の波とすると、第2の波は、紀元前1万年から西暦12世紀ごろまでの1万年余りの間に生じた各地域での農耕文明の開花とその周辺への拡大である。この間に、言語、人、習慣、文明や宗教など今日の人類社会に存在するあらゆる多様性の基本が生まれた。そして第3のグローバル化の波は13世紀から17世紀の400年間におこった。中央アジアそして一部ヨーロッパを含むユーラシア大陸に及ぶ世界帝国を築いた広大なモンゴル帝国の出現により広域圏での陸上交通のみならず、アジアからアフリカ東海岸に至る大航海時代の幕が開かれた。そして16世紀にはポルトガルやスペインなどによりユーラシア(アジア、ヨーロッパ)、アフリカ、オーストラリア、アメリカ大陸が7つの海洋で結ばれた。第4の波は、18世紀末から始まった産業革命に端を発するイギリスを中心とする植民地主義、その後のヨーロッパ諸国の帝国主義やアメリカの台頭、その結果としての2度の世界大戦と共産主義の出現や大戦後の東西冷戦構造への道筋である。この間、主役はイギリスからソ連やアメリカと変遷こそすれ、20世紀末のソ連やベルリンの壁崩壊に象徴される冷戦の終結で決着をみた。そして現代、20世紀末から始まった第5波のグローバル化、それは20世紀に花開いた相対性理論や量子力学に基づいた科学・技術の急激な発展により人類が経験したことのない地球の極端なまでの狭小化が引き起こす波だ。

 移動手段や情報伝達手段の発達により緩やかではあれ、確実に狭くなってきた地球は、この100年の間に過去の20万年間に生じた変化に比べて、遥か次元を超えて狭くなりつつある。人類はその歴史のなかで幾度となく大きなグローバル化の波に襲われてきたが、今人類が直面しているグローバル化の波は過去のそれとは全く中身が違うものだ。すなわち人類の生活の基盤としている地球そのものが劇的に狭くなることを伴うものだ。その意味で、人類は今まで経験した事がない性格のグローバル化の波の中に巻き込まれていると考える事が出来る。すなわち新人類が20万年前に誕生して以来最大の大変革期に私たちは生きている。長らく比較的広大な地球に存在していた多様性は、今第5のグローバル化の波のなかで、人口増加も加わり狭い時間空間に凝縮されようとしている。多様性の凝縮の問題に加えて、急激な人口の増加や技術革新は食料問題、エネルギーや環境問題、さらには感染症問題や生物多様性の危機など、様々な要因が複雑に絡んだ地球規模の深刻な問題を投げかけており、21世紀は「多様性爆発の世紀」と言える。