9月8日にQST全職員を対象にオンラインで理事長講話を行いました。
講演は下記のYoutube.comに公開しています。
演題:新型コロナウイルスは人類に何を語るか?
1万年前に始まった農耕時代に家畜化された動物より人類にもたらされた結核、天然痘、はしか、水痘、インフルエンザやペストなどは人類の歴史に大きな影響を与えてきた。21世紀に入り人類史上第5波と呼んでもよい大変革期とともに、新たな感染症が人類の前に立ちはだかろうとしている。それは人類が環境破壊により招いた新興感染症である。伝統的感染症は家畜から人類への伝播であったが、新興感染症は環境破壊により人類社会(家畜を含む)と野生動物が急接近したことに起因する。21世紀になり、すでにSARS、MERS、エボラ出血熱などの流行が発生した。また鳥インフルエンザがいつ何時パンデミックを起こしても不思議ではない状況が続いている。このような状況でCOVID-19はパンデミックとなった。
21世紀、第5波は多様性爆発に加えて新興感染症爆発の時代でもあり、これを乗り切るためには、世界の人々が「地球市民としての自覚」を持たなければならない。世界は1つである。協調と信頼なくして、感染症を克服することはできない。今こそ異文化を理解し、尊重することの重要性を思い出さなければならない。そしてQSTの理念である「調和ある多様性の創造」により、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献しなければならない。
ワクチンや治療薬の開発が成功し普及するまでは、COVID-19の完全収束には2−3年は必要であるという前提で、またCOVID-19は21世紀に生じる新興感染症流行の1つに過ぎないという認識のもとに、QSTの使命である量子科学技術研究開発を切れ目なく進めていく必要がある。そのためには感染症の実態を理解するとともに、感染症対策の基本は感染者の迅速な把握と隔離であり、感染拡大を防ぐことであることを認識しなければならない。
以上の考え方に立ち、1)個人や組織レベルでの感染防御の徹底(手洗い、マスク、3密回避)、2)ウェブ会議、テレワーク、在宅勤務の継続と、それらの活用法の改善と効率化、3)QST職員全員によるCOCOAのダウンロードと、組織としての有効活用による迅速な感染者の把握と自宅待機などによる隔離並びに早期治療の実現を推進するとともに、これを契機と捉え、4)在宅勤務の制度化等働き方改革による新しい有能な人材の発掘、5)QST病院におけるオンライン診療の拡充、6)ウェブ会議の最大限活用による出張抑制と、その費用を使用した情報基盤の強化、7)実験の自動化やリモート分析などデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていきたい。
いま、QSTの理念はますます光り輝いている。我々の理念を実現するためには、QSTの全職員が目の前のCOVID-19に負けることなく心を合わせて一つになり、それぞれの立場で感染防御に努めながら、我々の使命である量子科学技術を高いレベルで推進し、我が国のみならず世界に貢献していく必要がある。
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1)21世紀に輝きを増す「QSTの理念」
〜量子科学技術を介する「調和ある多様性の創造」により、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献する〜
2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)概要
3)人類の歴史は感染症との戦いの歴史
4)グローバル化第5波:新興感染症爆発の兆候
5)新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は何者か?
6)免疫は諸刃の剣
7)免疫には自然免疫と適応免疫がある
8)1972年医学部卒業:インターロイキン6(IL-6)発見とその作用機序の解明
9)新型コロナウイルス感染症(COVID-19) におけるサイトカインストームとその治療
10)有識者による「COVID-19に対する提言」と克服への道:QSTの考え方と対策